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1/1写真という冒険 第1回

撮影・特撮・文=古賀 学

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トミカ・プラレール・ガンダム
ぼくには現在3歳の息子がいるのだけど、その息子がトミカやプラレールでひとりで遊ぶ様子をこっそり観察しているのが好きだ。彼は頬を床につけながら並べたミニチュア車両を超ローアングルで鑑賞して楽しんでいる。彼の頭の中には実物大の消防車や新幹線がイメージされていると思うと、見ているぼくも楽しくなってくる。

2009年お台場潮風公園に高さ18メートルのガンダムが大地に立った。日頃から「モビルスーツが実在したらきっとこんな感じだろう」という想像で頭がいっぱいのぼくは、お台場に立つガンダム立像を見て「あれ?なんだか想像していたのと違うな」という印象を持った。でも、想像していたのとは違うけど、想像を超える「巨大なガンプラ」としての存在感・・・違和感に感動して大笑いした。感動を起こす強烈な違和感なんて簡単につくりだせるものではない。その潮風公園から1年後「感動できる違和感」をつくりだすアイデアを思いついた。

架空のロボットではなく、実在している自動車や電車がモチーフのトミカやプラレールは、実物大をイメージするのは難しくない。我が家のマンションに実物大のトミカが駐車している様子をイメージしてみると、あの潮風公園の感動がよみがえってくる。これだ! 実物大のトミカをつくろう! あのダイキャストの質感そのままで、ディテールの甘さもそのまま巨大化して、分厚いドア、歪んだフロントガラス、これはかなり楽しい作品になるぞ!

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プラレール S-01 ライト付700系新幹線(JR東海承認済) ©TOMY ©Manabu Koga

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ミニチュア風写真と1/1写真
いや、でも、ちょっとまてよ。観客を「違和感」で感動させようとした場合に、実際に実物大トミカ像を製作することが必ずしも最善の方法とは思えない。もっと効果的に感動させる方法があるはずだ。

本城直樹氏に代表される「ミニチュア風写真」という写真表現がある。ピントが合う範囲(被写界深度)を浅くして極端な単焦点にすることで、鑑賞者の脳内でスケール感の麻痺を起こす画期的な手法だ。現代人は写真のピントによって奥行きを把握する能力を、気がつかないうちに日常的に学習していたのだ。写真がない時代の人間がミニチュア風写真を見てもミニチュアには見えないだろう。その現代人の能力を巧みに利用したのが「ミニチュア風写真」。特殊なレンズを用いた撮影や、フォトショップ加工による簡易再現など、表現手段は様々だが、現実を切り取って別の存在(現実をモチーフにした実在しないジオラマ)をつくりだすことに成功している。

風景写真を卓上サイズに見せる「ミニチュア風写真」とトミカを駐車場に置いて見せたい「巨大化計画」は、きれいに正反対である。だが、鑑賞者を「違和感」で感動させる部分は共通している。写真作品という表現手段で「違和感」は伝達可能なのだ。実際に実物大のトミカ像をつくらなくても、実物大のトミカがいる駐車場の写真はつくれるわけだ。写真作品ならば実物大トミカ像を製作するよりも技術的・経済的・時間的な制約のハードルを大きく下げ、シリーズ作品として「違和感」を並べることが可能になる。

2010年の夏にアイデアを思いつき、そこから実験的なトライアルを繰り返しながら作品をつくり貯めている。

実際の製作作業はモチーフになる車両が写る(写っていない場合もある)現実の風景写真に、ミニチュア(トミカやプラレール)を自宅スタジオで時間をかけて可能な限りアングルやライティングなどのシチュエーションを一致させて撮影し、丁寧にフォトショップ上で合成・レタッチしていくというもの。現実世界を材料に、実在しないジオラマをつくりだす「ミニチュア風写真」。それとは逆に、目の前にあるミニチュア(トミカ・プラレール)を材料に、実在しない現実世界(笑)をつくりだすのが「1/1写真」だ。

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プラレール S-32 ドア開閉E231系500番台山手線(JR東日本商品化許諾済)
プラレール S-33 E233系京浜東北線(JR東日本商品化許諾済) ©TOMY ©Manabu Koga

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違和感がない違和感
1/1写真シリーズ作品の一部にJR品川駅で撮影した新幹線や在来線をモチーフにした連作がある(角川書店「ケロケロエース」2011年5月26日発売号・ハイパートイフォト掲載)。700系新幹線、山手線、京浜東北線、成田エクスプレスのプラレールが品川駅のプラットフォームに入ってくるという風景は、青いレールやプラスチックな質感など、「違和感」だらけなのに違和感がないという「違和感」。企画段階で考えていたイメージよりも遥かにリアルなのだ。これまで考えていた模型的なリアリティ(正確なフォルムや精巧なディテール)なんか全然ないと思っていた低年齢向け玩具(対象年齢3歳以上)を被写体にしてリアルなイメージが撮れてしまったのだ。

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プラレール S-15 成田エクスプレス(JR東日本商品化許諾済) ©TOMY ©Manabu Koga

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(つづく)「プラレール」は株式会社タカラトミーの登録商標です。
1/1写真作品の掲載・展示などにつきましては古賀学まで直接お問い合わせください。
(メール: koga@peppergear.com/twitter: @manabukoga

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